カプティウス
高田馬場ラビネスト
安西慎太郎さん一人芝居
2020/2/19 昼公演 NB列
2020/2/23 昼公演 SC列
一人で舞台に立つって演劇では多くないですけど、漫談やコント、狂言など実は日本の伝統芸能では少なくないんですよね。
ただその多くは一人二役だったりして、一人だけを演じ切ることってあまりないのかもしれない。わたしが今まで触れてこなかっただけかもしれない。
初めて見る一人芝居がこれで良かったと思います。安西慎太郎くんの演技が好きなので。
初めて見る一人芝居がこれだったのは良くなかったかもしれません。他の方の一人芝居をどう見れば良いのか迷ってしまうので。
テニミュで出会ってから、各公演一回は観に行っている役者さん。かれこれ5年くらい観に行っている。もうそんなに経つのか。
どの公演を見てもどんな役をやっていても、目を引く、心を引きつけられる役者さんの1人。とにかく演技がめちゃくちゃに上手い。
演劇が好きなんだろうと思っていた。あまりにも毎度の熱量が凄いので。今回アフタートークでも演劇が好きと仰っていたので、間違いではなかった。
内容は太宰治の「人間失格」を読んだある男の独白のような、演説のような、独り言のようなものが続く。
男の主張は二転三転していく。男の動きは一定のようで規則的なようで、心地いいようで気持ちが悪い。
見ていても聞いていても不安を煽る演出だなと思います。照明も、天井に反射する素材が使われていて、面白かったな。ちなみにあの天井、普通に舞台上のものも見えるので前の人の頭で見切れる時は上を見てました。
匂いが微かにするんですけど、パンフレットと同じ匂いっぽかった。パンフレット見ると劇場を思い出す仕様。匂いの演出って、実はあまり存在しない。箱が小さくないと成立しないですし。
音響もなんかザワザワした音が微かに鳴るのめちゃくちゃゾワゾワした。
円盤化は有りませんという意味がめちゃくちゃわかる。匂いも微かな音も微妙な明かりの変化も空気も、あの場でしか味わえないものばかりで。円盤に閉じ込めたら全て死んでしまいそうな繊細さだった。
でもあれだけ凄いものをあの数日あの人数だけしか共有出来ないのも勿体ないなと思う。難しいな。記憶の共有みたいなのが出来たら今すぐ見たい人に見せたい景色です。
男の言葉は、音声のような思考のような、他人のような自分のような、不思議な感覚になる。
張り詰めた空気と緩和、最後に男は「生きてください」と熱弁したその口で、薬のようなものを飲み、「先に行く」と告げて暗転。
記憶に留めたくて書いたけど、公開するか迷った。けれど残しておく。
これはわたしがこの作品に抱いた感情であり、わたしの中で完成したカプティウスという作品の記憶です。
よく演劇含むパフォーマンス、瞬間芸術というものは、受け手が居て初めて成り立つと言いますが、カプティウスは受け手によってかなり変化する作品だという印象を受けました。
わたしの中のカプティウスは、刹那的で暴力的で、それでいて自分の心に寄り添ってくる、厄介で愛おしい作品です。
引き摺られたら二度と戻ってこられないような恐怖と、男を憐むような気持ちと、男に共感してしまう自分に対するよくわからない感情。
ポエムみたいになってしまったけれど、心の中に土足で入ってきたくせに、美しいダンスを踊って出て行かれたみたいな気分になりました。なんかもう、なんて言語化したらいいのか正直わからないんですよね。
こうやって言葉をこねくり回したくなるような気持ちになるタイプの作品でした。
アフタートーク
イリエナナコさんのお話面白かったな。
彼女にとって作品は排泄物で、出さないと気持ち悪い、出すと頭から消えてスッキリすると。
わたしは自分で例えば小さい頃学校で絵を描いているときにそんな感覚になったことがあるかと言われたらほぼ無い。理想型があってそこに近いほど楽しくなるかんじだったかな。
逆にこうして書いてる文章はそれに近いかも。考えてることを言語化することで心を整理しているというか。
秋元くんのアフタートーク
いやいや、安西慎太郎くんはイケメン俳優だからね!?イケメンじゃなかったらオダギリジョーの過去の姿オファー来ないでしょ!?(アリスの棘)あと2.5でやってた役ほとんど公式で美形だったと思いますけど!?!?
という気持ちで見ていましたが、本人はわりと三枚目路線も好きそうだし、楽しそうならなんでもいいなぁなんて思ってしまう。
あのですね、あえて言うなら、多分、自撮りがあまり、上手じゃ、ないんだと、思います。(小声)……そんなところも魅力的だな、と思ってしまうので、これはただの盲目なのかもしれないですけれど。
わたしは舞台演劇が好きなので、安西くんがこれからも舞台役者としてやっていきたい!と言ってくれたのはめちゃくちゃ嬉しかった。役者を目指したきっかけが映像だったことは重々承知なので、そちらも機会があれば挑戦してみて欲しい気持ちもあるけれど、やっぱり舞台で生きていきたい!という若手俳優がいて、それが好きな役者さん、というのは、めちゃくちゃに嬉しい。幸せな話だ。
あと、油断すると役に入り込み過ぎて客観的にみられなくなり暴走する、という旨の話、安西くんがアレを計算してきちんと演技していたのかと思うと気が遠くなる。冗談抜きに天才なんじゃないかと思ってしまう。いつも入り込みすぎるギリギリで居るイメージなので。憑依型、というか、……末恐ろしいな。まだ20代なんですけど……。
カプティウス、アフタートークが無ければ、心がぼんやり現世から浮かんだまま帰ることになるので、現実に戻れる時間が設けられていたのはありがたかった。
Twitterの方で、これは実質安西慎太郎くんのファンミーティング、という呟きを見かけましたが、本当にそれ。
安西くんの現時点での集大成とも言える一人芝居を見られて、アフタートークで今まであまり聞かなかったオフの話、本人の話しを聞けたの、あまりにも贅沢すぎたし、安西慎太郎という役者の魅力をまたいくつも見つけてしまって、ますますこの先が楽しみになってしまった。ありがとうございました。