COCOON 月の翳り星ひとつ 「星ひとつ編」
5/13 19:00
1階中盤列上手側
繭期未経験の私が、星ひとつ編に挑んだ話。
安西慎太郎くんが出るっていうので初めての繭期が決まりまして。
繭期振り返り配信があったのは知ってたんですけど、どうにも都合がつかず断念。
というわけで、トランプシリーズ予習なしぶっつけ本番、星ひとつで初めて繭期を経験した私の感想です。
友人にも初めての繭期がこれの人の感想見てみたいと言われましたので。
ちなみに繭期が好きな人間が周りに多いのでなんとなく、ソフィ、ウル、クラウスは名前を聞いたことがある気がするな、と思いながら観ました。その程度の知識しかない。
しかし聞いたことがあるということは即ち過去作に出てたんですよね。見たら余計にしんどくなったり幸せになったりするやつだなというのは理解しました。
月の翳りを見たあと、こころに余裕が出来たら見ます。見始めたからには見たいじゃん!?楽しい地獄をみたいじゃん!?
仕切り直し。
ネタバレガンガンするのでまだ見てない人は見ないほうがいいと思います。
グッズ、舞台セット、客入れ音楽からもう世界観の構築に執念を感じる。
ヴァンパイアのお話なんだよね、雰囲気ある〜〜!とテンション上がりまくり。客入れから空気を作るタイプの作品好きなんです。その場に居るから味わえるワクワク感!
いや、これから確実にメンタルボコスカ殴られるのはわかってるんですよ。周りの人が繭期に思い入れあるの聞いてたし。だから最後の空元気ですね。この辺が。
冒頭、生まれたばかりの赤子に「ドブネズミくさい」と言い放つ男。
一生を怯えながら生きろ、これは呪いだ、と暗い声で言い聞かせ、首を噛む。
うって変わり、生きろと明るく、愛おしげに、懇願するように語りかける声、もう一度、赤子は首を噛まれる。
宮崎くん演じるウルが、これは僕の物語。僕とソフィの物語だ。と宣言し、物語は始まる。
ヴァンパイアと人間の混血 ダンピール
ダンピールとして、自分として凛と生きようとしたソフィと、
名家に生まれ、ダンピールであることを伏せよと育てられたウル。
ソフィに憧れを抱くウルと、1人で生きると決めたけれどウルに心を開き始めるソフィ。
己の性質を否定して生きる事は、己を殺すことに等しいのかもしれない。
ウルの、名家の生まれだから周りにチヤホヤされるが、その横で薄汚いダンピールめ!と罵られるソフィに自分を重ねているであろう葛藤が恐ろしく残酷。
ソフィが正々堂々胸を張って生きようとするほど、そんなソフィにウルは憧れながらも無意識に劣等感や嫉妬を感じていたのではと思うと、あまりにも。
そりゃお兄ちゃんもソフィを引き離したいよね。そりゃそうです。
でもウルにとっての彼は憧れでも大切な友人でもあるわけで、離れたくないんだよな。全てがもどかしい。
父親も、ああして振る舞わないと大事な我が子を守れなかったんだな、というのは、最後に理解しました。
そめちゃんめちゃくちゃ良かったな。ビジュアルの良さも含めて。
ウルはソフィに、お前は俺で俺はお前だという言葉をかけますが、結局のところ薄命のダンピールでありながらその立場や生き方は全くの別物で、ウルとソフィは同一ではない。当たり前なんですけど。
ウルには誰一人として、完全な理解者は居なかった。
けれどソフィは最後までウルに寄り添っていた。これだけが真実で、ウルにとっての星だったに違いないと思ってるわけです。
ウルは産まれながらに自分を否定し、それでも生きようと願っていた。真祖の不安定に影響されていたこともあるけど、それこそ気が狂うほど、生きたいと思っていた。
ダンピールであることを嘆きはしても、死にたいとは思わなかったのが、ウルの強いところだと思う。
ウルの最期、きっと、ダンピールであることも名家の生まれであることも知った上で寄り添い、友達だと、生かそうとしてくれたソフィは、間違いなくウルにとっての星だったんだろう。そう思わないとやってられない。
初見だし話が話なので主人公のウルを追いかけて話を見ていましたが、
アイデンティティと他者理解、過ぎた力を前に生物の欲とはどう作用するのか、とか。
重たく、決して他人事と笑い飛ばせないテーマをこれでもかというほど突きつけられた2時間でした。
いや2時間?まじ?話の重さは余裕で4時間くらいの満足感だよ。
クラウスくんとアンジェリコくん、ラファエロくんのクソデカ感情ほんと。
この3人についても触れていい?
アンジェリコについては多分月の翳りで触れると思うので(だってメインビジュアルだし)、やんわり触れますけど、
ヴァンパイアとして生き、その能力を遺憾無く駆使し、ヴァンパイアを守るという感情を拗らせつつラファエロに執着してきたわけじゃないですか。ここまででお腹いっぱいなんだけど月の翳りどうすんの2時間でおさまります?
真祖の不安定?がどこまで彼らを狂わせているのかわからないんですけど、ラファエロに対する歪んだ執着は元からという気がしてならない。
あと人間への憎しみを喚き散らしていたので、いつか詳しく教えてくださいね。月の翳りでお話ししてくれるかな。
あとイニシアチブについて教えてくれてありがとうございました。中盤で君が来てくれなかったら吸血鬼同士で噛むと操れるのね。とすると冒頭の男は赤子にイニシアチブを植え付けたわけだ。これがお父さんなわけだけどごめんお父さんについてはラファエロくんのとこで書く。
というわけでラファエロくん。
彼も彼で、とんでもねぇ立場ですよね。
名家に生まれ誇り高くあれと育てられ、弟の秘密を守り、家を守り。
いやお父さんに大いに責任があると思うんですけど父上にとってウルはそもそも、禁忌を侵してでも交わりたかった人間とのこどもなわけで、ウルを汚点だとしながら生かそうとしている時点で父上にとってウルの母親はどう考えても特別な存在じゃないですか。
じゃあラファエロはどうすんだって話なんですよ。
割と聡明な方とお見受けしましたので、ラファエロは全てを飲み込んでなお、弟も家も守りたかったんだろうな。それは父の刷り込みでもあり、呪いでもある。ように見えた。無論、彼の意思や感情が無いわけではなさそうだったけれども。そうでなければ父の傀儡だったんだろう。ウルの指摘通り。
父の言うことを守りさえすれば良いと行動していたことがラファエロの罪だと思うんですよね。他の道を探そうと思えば探せたのかもしれない。もし過去作でそれを探しながらも挫折していたのだとしたら申し訳ない。
彼にも自我があり、それは家を守りたい家族を守りたいというあまりにも幸せとして正しく見えるものを守ろうとした姿を誰も責められはしない。
唯一踏み込めそうだったのがきっとアンジェリコなんだと思うんですけど、彼も彼で理解者が欲しかったんだろうな。
ラファエロの最期があまりにも酷いので、彼にも星を見せて欲しかった。でもそうじゃないからこの物語を美しいと感じてしまうんだろうな。
これは昔からの持論ですが、人間は完全なものにこそ、欠けてる部分かあればそれを愛おしく思ってしまう、と、信じているので。
父上の最後のセリフ、彼は彼で星をつかんでいたんだなと思わされたので、余計にラファエロくんのことを「かわいそう」と思ってしまう。ごめんね。
ティーチャー クラウス。
永遠の命を生きる者というテーマは、人間は浪漫が好きですからね、創作物では何度か巡り会いましたが、何度見てもしんどいですね。
数千年生き続け、やっと出来たと思った友人を失い、ボロボロのまま生き続け、失った友人の子孫に出会う。
己の語彙力のなさが悲しいけど「しんどい」以上の言葉が見つからない。
友人本人じゃないソフィを永遠の友に選んだクラウス、これから先、その人じゃない代替品の友に対して、ソフィ自身を見出すのか思い出の幻影を見続けるのか、非常に興味があります。
星に手が届いたと口にするクラウス。彼にはソフィが見えてるのかな。ソフィは本当に彼の星になれるのかな。
あと人間くんがどうしてもソフィを生かしたかった理由が今作では明言されなかったのできっとどこかで見れるものと思います。探したいね。
結局誰もがエゴのために動いていて、誰もが他者を完全に理解することはできない。誰もが誰とも同一のものにはなれないし、だからこそ寄り添いたいと願うのかもしれない。
総じてとんでもない世界だった。えらい場所に足を踏み入れてしまった。
来週は月の翳りを見に行くので、また感想書きたい。あっちはどんな話なんだろ。メインビジュアルから読めるのはアンジェリコが主役の話になるんだろうなってことだけなんだよね。こわーい……